顧客行動は計算や分析では理解できない?

まず確認したいのは、「顧客行動を、どのようなものと考えるべきか?」ということである。少なくとも統計で把握できるほど単純なものではないことは分かります。

例えば マーケティングリサーチです。

ご存じのとおり、これほど市場が成熟、変化を遂げ、顧客ニーズも多様化しているいま、従来の手法によるマーケティングリサーチだけでは顧客行動を理解するには至らない場合が多いのです。

アンケートやヒアリング調査、インタビューによって顧客の意見を吸い上げ、統計的に分析し、それらを基に、理詰めで製品開発やマーケティングのプランニングを推し進めても、必ずしも有効な策が構築できるとは限らないのです。

ジャック・トラウト著『無敵のマーケティング──最強の戦略』(阪急コミュニケーションズ/2004年11月刊行)では、次のような事例が紹介されています。デュポンがスーパーの店舗を訪れた客5000人を対象に、店舗入口では「これから何を買うつもりか」、店舗出口では「実際に何を買ったのか」を聞くヒアリング調査を行ったところ、入口では「買うつもり」と答えていた商品のうち、実際に購買行動に結び付いたものは全体の30%程度であったといいます。

この例から分かるように、質問に対する顧客の応答はあくまであいまいな判断でしかないのです。ただ、これは顧客が「いい加減に回答している」ということではまったくないのです。店の入り口の段階で、顧客が想定していることはあくまで“かりそめのプラン”に過ぎず、購買という最終的な判断は、気に入った商品が目に付いた、販売価格が下がっていたなど、店舗の中でたまたま遭遇したあらゆる要素が混合した結果なのです。

現実の世界では、顧客の意思が行動として現れるまでに、差異が生じることは、ある意味、当たり前といえるでしょう。もっといえば、店舗の入り口で、来店目的にまだあいまいさを残しているような段階で、「何を買うか」聞き出そうとすること自体、「人間」という、本来深く分析すべき対象を「消費者」という型枠に入れ、細かいことは無視してしまおう、というスタンスにほかならないのです。マーケティングリサーチを否定しているわけではなく、そうした認識を常に持っておくことが必要だといいたいのです。

すなわち、「顧客行動」とはとても複雑かつあいまいなものであり、アンケートやその分析だけで理解できるようなものではないのです。考え方も感じ方も1人1人が異なる、非常に複雑な「人間の行動」であることを忘れてはならないのでしょう。

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